気分障害

気分障害とは

気分障害とは一定のラインを超えて気分がハイテンションになったり落ち込んだりする状態が、ある程度の期間続く疾患の総称を指します。
抑うつ状態が続く「うつ病」と、躁状態になったりうつ状態になったりする「双極性障害(躁うつ病)」の2つに分類されます。

気分障害(うつ病、双極性障害)の特徴と治療法

うつ病は風邪のように、誰でも発症する可能性もある疾患です。しかし自然治癒で治したり気合いで治ったりするものではありません。
適切な治療を受けないと、重症化して最悪の事態に至ってしまう疾患です。
近年では、気分障害の中に分類されています。
以下の項目では、うつ病と双極性障害について、解説していますので、ぜひ参考にしてください

うつ病

うつ病とは

抑うつ状態が主に現れる疾患で、様々な症状がみられます。身体に症状が現れる「身体症状」と、精神的な症状が現れる「精神症状」という、2つの症状が出現します。
次の項目では、2つの症状について、紹介していきます。

うつ病の身体症状

睡眠のトラブル

「夜眠れない」「寝つきが悪い、浅い」「熟睡感がない」「寝すぎてしまう」「早朝に目が覚めてしまう」などのトラブルがよくみられます。

倦怠感

身体が重く感じやすくなります。倦怠感が重くなると、布団から起き上がれなくなることもあります。

食欲が減る、増える

食欲不振で食べられなくなる方もいます。また患者様の中には、食べすぎてしまう方もいます。

うつ病の精神症状

気分の落ち込みや思考の停止

気分が落ち込んだり激しい憂鬱感に襲われたりします。また、考えがまとまらず堂々巡りになる、考える力が下がって思考停止すると言った症状も現れます。

焦燥感・集中力の低下、自信喪失

焦りの感情を抱いたり、集中力が下がったりすることでミスも多くなります。そこからさらに、自信も喪失しやすくなります。

意欲の低下

やる気が出なくなったり、意欲が下がったりします。好きだった物事への興味や関心も薄れてしまうこともあります。

「死にたい」と思う、自殺を考える

「死にたい」と思ったり自殺を考えたりすることが多くなります。ご家族や周りの方は、自殺のリスクもあることを頭に入れていくようにしましょう。

うつ病の3つの治療法

以下3つの治療法に分かれます。

休養

休養は立派な治療の一つです。患者様にはまず、しっかり横になって休みをとるようお願いしています。
「仕事が忙しくて休めない」「休まず学校へ行って勉強しないと……」と悩む方は多くいらっしゃいますが、未来のことを考えるよりも現在の自分をいたわって、休むことに専念してください。

投薬治療

休養の次に大事な治療法として挙げられるのは、投薬治療です。まずは抗うつ薬をメインに処方していきます。ただし、抗うつ薬は服用し始めてから効果が発揮されるまで、数週間以上かかることがほとんどです。そのため抗うつ薬が効くまでの間は、即効性がある抗不安薬も一緒に処方することもあります。

カウンセリング・認知行動療法

休養や薬で症状が落ち着きましたら、悩みを話すカウンセリングや、物事の受け止め方を変える認知行動療法を行います。 また、「重大な決断は先延ばしする」「患者様本人を叱らない」といった配慮を、医師・臨床心理士側が求めることもあります。 医療機関によっては、電気けいれん療法を行う所もあります。

双極性障害

双極性障害とは

憂うつな状態と、気分が高揚している状態を交互に繰り返す状態で、「躁うつ病」とも呼ばれていた疾患です。うつ病と誤診されたり、「ハイテンションな性格」だと勘違いされたりするケースもあります。
あまり事情を知らない方から見ると、双極性障害という疾患だと見抜けないことも少なくありません。

双極性障害の特徴

躁状態とうつ状態を繰り返すという大きな特徴があります。
うつ状態になると、「うつ病の症状」で説明した内容と同じ症状が現れます。躁状態の症状につきましては、下記にて紹介します。

躁状態の症状

口数が増える

いつも以上に口数が増えます。相手が会話に入れなくなるほどマシンガントークになり、ひたすら話し続けることもあります。

眠らなくなる

睡眠時間がかなり減ります。それにもかかわらず、躁状態の時は疲労感をあまり感じないところが特徴です。

ハイテンションになる

行動も言動も大胆になり、「自分はなんでもできる」という万能感が湧いてくることもあります。それにより、金銭や人間関係のトラブルに遭う方も少なくありません。
また、双極性障害でも自殺のリスクはうつ病と同等だと言われています。むしろうつ病と比べて、躁状態になる双極性障害の方が自殺を予防するのは難しいとされています。

双極性障害の治療方法

主に、薬物療法と心理教育で治していきます。

薬物療法
気分安定薬などを中心に処方します。しかしうつ状態の時に受診したことでうつ病だと誤診され、抗うつ薬が処方されてしまうケースも少なくありません。抗うつ薬を飲むと症状が悪化する可能性が高いため、きちんと鑑別する必要があります。
日常での様子を医師に伝えるため、家族の方はできる限り、患者様と一緒に付き添って受診されることを推奨します。
心理教育

社会生活のリズムや人間関係の問題などに関するトレーニングを行い、躁状態で起こり得るトラブルを軽減させます。また再発率が高い疾患なので、再発予防のトレーニングを行うこともあります。
なお、ご自身や他者を傷つける可能性が高いと判断された際には、入院治療が選択されます。
うつ病も双極性障害も、命に関わる疾患です。お悩みの方はぜひ医療機関へ相談し、早めに適切な治療を受けるようにしましょう。

持続性気分障害(感情障害)

持続性気分障害とは

気分がハイテンションになったり落ち込んだりするなど、気分が不安定になっている状態が長期間続く疾患です。気分の落ち込みはうつ病と比べて軽めです。しかしその分、患者様やその周囲の方々は、「落ち込みやすい状態=本人の性格」だと勘違いしやすくなります。不調に悩み続けても、医療機関に相談しない方も少なくありません。

持続性気分障害の症状

症状によって、「気分変調症」と「気分循環症」に分けられます。

気分変調症

1日中軽い抑うつ状態(うつ病と診断されない程度)が続き、その状態が2年以上も継続してしまう疾患です。
好きなことへの興味・関心が薄れる、集中力が続かない、罪悪感や絶望感に襲われる、不眠、意欲減退などの症状が何度も現れ、慢性化します。

気分循環症

双極性障害の診断がつかない程度ですが、軽度の躁状態とうつ状態が不規則に繰り返され、それが1年〜2年以上継続する疾患です。子どもや青年、大人によって症状の持続期間が異なり、成人の方が長く続きやすいとされています。
短期間で躁状態とうつ状態を繰り返すため、仕事や日常生活に支障をきたすことも少なくありません。気分の変化が起こることで周囲から「気分屋」「気まぐれな人」「一貫性がない」などと誤解されるケースもあります。予測できない言動によって、トラブルメーカーだと思われることも多くあります。
一方患者様の多くは疾患だと気付かず、軽い躁状態の時は「ちょっと元気だな」、うつ状態の時は「気分が悪いな」と感じる傾向があります。

持続性気分障害の診療科目・
検査方法

精神科や心療内科で治療します。問診で既往歴や症状をお伺いしてから、診断を下します。
また、何年も症状が続いたり、症状が悪化してうつ病・双極性障害などに移行したりすることもあります。特にうつ状態が続く場合は、早めの受診を推奨します。
日常生活に支障をきたしている時や、周囲とトラブルを起こしそうで不安な時も、ぜひ受診しましょう。

持続性気分障害の原因

「元々の性格(強い不安・抑うつ傾向があるなど)」や幼少期の家庭環境などが原因だと考えられています。しかし、はっきりとした原因は解明されていません。
そこに社会的ストレスが加わって抑うつ状態になり、発症すると言われています。また、うつ病や双極性障害になった血縁者がいる方は、気分変調症・気分循環症になりやすいです。

持続性気分障害の予防・
治療方法・治療期間

薬物療法や認知行動療法、洞察指向的精神療法を行います。
薬物療法で用いられる抗うつ薬や気分安定薬には副作用があるため、医師と相談しながら調整しましょう。
また、認知行動療法などは回数を重ねるほど症状が軽くなるトレーニングです。辛いかもしれませんが継続していけば、効果が発揮しやすくなります。

持続性気分障害の治療経過
(合併症・後遺症)

診断から1年以内に、症状が寛解される方はおよそ10~15%です。症例の50%は、症状が慢性長期化すると言われています。また、悪化してうつ病や双極性障害などを併発するリスクもあります。
症状を自覚するのが難しく、治療を始めるまで何年もかかってしまうケースも少なくありません。早期発見・治療を行って、予後を良くすることが重要です。

持続性気分障害になりやすい
年齢や性別

気分循環症の男女比は3:2と、男性に多くみられます。しかし気分変調症の場合、男女差はありません。気分変調症の患者数は一般人口の5~6%ほどで、独身の若年者に多くみられます。
気分循環症の患者数は一般人口の約1%で、15~25歳の間に発症しているケースが多いと言われています。

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