神経症性障害

恐怖症性不安障害

広場恐怖症

恐怖症性不安障害
  • パニック障害を伴うタイプ
  • パニック障害を伴わないタイプ
発症しやすいシチュエーション

広場恐怖症とは、対人恐怖に近い精神的不安や緊張、恐怖に悩みやすくなる状態です。特に、知らない人に囲まれている状況下にいると、症状が現れやすくなります。そのため外出や通勤・通学が難しくなり、日常生活に大きな支障をきたす方もいます。その結果、休職や引きこもりになる方も少なくありません。

例:人が多い所、乗り物(電車やバス、飛行機)、ス―パ―やコンビニでの買い物・レジ待ち、美容院、歯医者、自宅から出る状況、自宅内で自分以外の人がいない時(症状が起こった時、誰にも気付いてもらえないことに対する予期不安)。

パニック障害とは、激しい恐怖や不安を感じた後、数分のうちに動悸や胸苦しさ、呼吸困難などが強くなる状態です。少なくとも症状は数分間続き、その場で倒れたり医療機関に救急搬送されたりするケースもあります。しかし検査を受けても、呼吸循環器や脳神経などの疾患や異常は発見されません。
しかし、一度遭った体験に対する恐怖感が強くなり、ドクターショッピングを繰り返す患者様もいます。

症状
自律神経機能症状

動悸、吐き気、めまい・立ちくらみ、息苦しい、胸苦しい、汗が出る、頭痛、肩こり、腹痛・胃痛、下痢、耳鳴り、顔が赤くなる、まぶたの痙攣、滑舌が悪くなる、手足のしびれ、手足の震え、全身のしびれなど

精神症状

気が遠くなる、頭がクラクラする、自分が遠くにいるように感じて現実感がなくなる(離人症)、現実味がない感覚(現実感喪失)、自制が効かなくなる、「気が狂いそう」と感じる、気を失うことへの恐れ、「死ぬかもしれないのでは」という恐怖感

身体症状

回避や不安症状によって苦痛を感じる(または、それが過剰で不合理であると自覚している)。
予期不安から恐怖症的状況におかれた時、その状況を想定した時のみに、症状は現れます。

治療方法

投薬治療とカウンセリングなどで治していきます。これらの治療は、対人恐怖や対人緊張を和らげるのに有効とされています。患者様本人から、「病気ではない」「これからは、少しずつ行動していけばいい」と思えるところまで回復できるよう、サポートしていきます。しかしカウンセリングだけでは、不安や緊張、恐怖をすぐに乗り越えるのは難しいことかと思います。まず治療開始から数カ月間の間は、「薬を飲まなくても問題がない状態」まで回復することを目標とし、自信を取り戻していきます。
不安や緊張、恐怖から起こる症状の悪循環を断ち切るには、投薬を続けながら「今までできなかったこと(外出や乗り物に乗ることなど)」に少しずつチャレンジしていくことが大切です。
患者様が自信を取り戻して行動範囲を広げ、薬を飲まなくても行動できるよう、サポートして参ります。

薬物療法

不安や緊張、恐怖を和らげる薬を処方します。薬は副作用や依存性が少なく、離脱しやすいものを選択します。服薬の期間は数カ月で終わらせるようにします。
不安の持続期間が長い場合は抗うつ剤(SSRISNRI)も選択肢に入ります。

社会恐怖症(社会不安障害・
社交不安障害)

発症しやすいシチュエーション

広場恐怖症と比べて、言動や行動への制限はそこまで受けません。しかし交流時に不安や緊張、恐怖を感じることで、苦痛を抱きやすくなり、自律神経機能不全症状を起こすようになります。
仕事では、会社での会話や電話応対、会議、プレゼンテ―ション、会食などに、不安や緊張、恐怖を抱くようになります。また、大勢での食事や学級参観、パーティー、習い事など、多くの人が集まる場所へ行く用事があると「注目されたら嫌だ」「恥ずかしい行動を取ったらどうしよう」と強い恐怖感を抱き、欠席しようと考えてしまう方もいます。
このような状況下では、症状が起こりやすくなります。
また、症状が生じないよう回避し続けることに対する、精神的苦痛もあります。また、ご自身の行いが過剰なもので、不合理であることと自覚している方も少なくありません。
また、症状は「恐怖を感じる状況」だけでなく、「その状況を想像して考えた時」にも現れます。

治療

まずはカウンセリングで症状の内容と、発症する状況について把握しましょう。また、不安や緊張、恐怖を落ち着かせる薬と、自律神経のバランスを整える薬を少量処方します。SSRIやSNRIは基本的には使いません。薬は、依存性や副作用が少ないもので、かつ少量でもきちんと効果が発揮されるものを使用します。
また、無理のない範囲で行動し、「少しずつ行動できている」と自信を得ることも重要です。治療効果が得られれば、薬なしでも行動できるようになります。

強迫性障害(強迫症)

強迫性障害とは

強迫性障害とは自分の意思とは関係なく、特定の強い思考が何度も浮かんでしまう「強迫観念」や、特定の行為を何度も行わないと気が済まない「強迫行為」によって、日常生活に支障をきたしてしまう疾患です。悪化すると外出が難しくなり、仕事や学業に支障をきたすようになります。また、うつ病などの疾患と併発するケースもあります。

強迫性障害の原因

ストレスや成育歴、印象に残った出来事、感染症などの要因が関与して、発症すると言われています。しかし、はっきりとした原因は今でも解明されていません。
ただし、症状が長引く理由や悪化する原因など、治療に役立つ情報はだんだん判明されています。これらの情報から、有効な治療法も出てくるようになりました。

強迫性障害の主な症状

「強迫観念」とは、特定の考えが頭から離れなくなり、それが不合理だと分かっていてもコントロールできなくなる状態です。「強迫行為」とは、強迫観念によって生じた不安に掻き立てられ、特定の行為を何度も行ってしまう状態です。
強迫観念と強迫行為のうち、どちらかだけ起こるケースもありますが、両方現れるケースが多いです。

不潔恐怖と洗浄行為

汚れやウイルス、細菌などに汚染されていないか怖くなり、何度も手を洗ったり洗濯をしたりお風呂に入ったりするなど、過剰な洗浄行為を繰り返します。手が荒れて肌がボロボロに荒れてしまっても、手洗いを繰り返す方もいます。また、不潔を恐れるあまり、電車などのつり革やドアノブ、手すりなどに触れなくなるケースもあります。

加害恐怖

「誰かに暴力を振るったかもしれない」という不安に駆られてしまいます。新聞やテレビ、インターネットのニュースを何度も調べたり、周りの人や警察に何度も聞いたりすることもあります。

確認行為

家の鍵を閉めたか、ガスの元栓を締めたか、家電のスイッチやコンセントなど切っていないかが気になるあまり、何度も確認してしまいます。指さしで確認したり手で触ってチェックしたり、見張ったりするなど、過剰な確認を行ってしまいます。

儀式行為

「自分で決めたマイルールに従って1日を過ごさないと、恐ろしいことが起きるのではないか」という不安に襲われてしまうようになります。「意味がない」と頭では理解していても、同じ手順やルールに対するこだわりが強くなるあまりに、突発的なイベントやトラブルに対応できなくなることもあります。

数字へのこだわり

「不吉な数字」「縁起の良い数字」などに強くこだわり、生活上で見かける数字が気になってしまうようになります。「ゲン担ぎ」や「おまじない」の範疇では収まらない状態です。

物の置き方などへのこだわり

物の配置に対する強いこだわりがある方もいます。「左右対称に並んでいないと気が済まない」「配置が乱れていると不安が強くなる」などに悩む方も少なくありません。

強迫性障害の治療

まず、薬物療法と心理療法を行います。
治療で大事なのは、「患者様が強迫性障害について理解しておくこと」「症状と日常生活で支障をきたしている点」「必要な治療に対する理解」の3つです。
そのため当院では、患者様と丁寧にコミュニケーションをとり、些細な質問にも細かく答えていきます。
強迫性障害は、日常生活に問題がないレベルまで回復させることが重要です。
強いこだわりをゼロにするのは大変難しいことなので、それに執着せず、症状の辛さや苦しさを解消させていきます。

薬物療法

強迫症状をはじめ、抑うつ状態や強い不安感などの症状に応じて、抗うつ薬であるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を処方します。服用を始めて2~3週間経過した後に、効果が発揮されやすくなりますが、もう少し後になってからの方が、効果に実感しやすくなるかと思います。一人ひとり「適切な量」は異なるので、経過観察しながら量を調節する必要があります。
少量処方で相性が良いかを確かめてから、少しずつ量を増やします。うつ病の治療よりも薬の量は多くなりやすいのですが、SSRI自体は副作用が軽い薬です。
服薬に関して分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

解離性障害

解離性障害とは

意識や記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが分断されることで、何らかの症状が起こり、その症状で日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう状態です。
主な要因としては、戦争や災害、事故などの大きな恐怖感を感じる出来事、幼少期の身体的・性的虐待、愛着の問題、元々の素質などが挙げられます。

解離性障害の症状

以下のように分類されています。

解離性混迷

急に動かなくなったり話さなくなったりする状態。

解離性健忘

特定の場面や時間の記憶だけ抜け落ちる状態。

解離性遁走

自分が誰かという感覚が失われ、失踪する状態。

離人症性障害

自分を外から見ている状態になり、現実感が消失される状態。

解離性同一性障害

1人の人間の中に、複数の別人格が入れ替わって現れる状態。

解離性障害の診断と治療

カウンセリングや薬物療法、入院治療などを行います。脳波検査やMRI、採血などを受けていただくこともあります。また、患者様が自覚できないこともあるため、適切な診断・治療を行うには、周囲の方からみた客観的な情報も重要です。治るまでかなりの時間を要する疾患ですので、周囲の方は症状の特徴や対処法について、理解していただけたらと思います。

身体表現性障害

身体表現性障害とは

傷みやしびれ、吐き気などの不調を感じているのにもかかわらず、検査などでは異常が発見されない状態です。心因性疼痛とも呼ばれています。
症状は長引きやすく、精神疾患だと気付かない方も少なくありません。
心身ともに敏感で、物事をネガティブに捉えやすい方、過度なストレスにさらされやすい環境にいる方が発症しやすい傾向にあります。

身体表現性障害の種類

「アメリカ精神医学会による診断基準(DSM-IV)」を基準に、5種類に分類されます。下記で説明する症状は決して、患者様が嘘をついたり思い込んだりして作り出されたものではありません。

身体化障害

30歳前に、頭痛や腹痛、吐き気・嘔吐、便通異常、生理痛、性交時痛、失神、疲労感、性欲減退などの症状がみられます。

転換性障害

腕や足が麻痺する、触ってもその感覚が分からないなどの症状が現れます。

疼痛性障害

日常生活に支障をきたすほどの痛みが続きます。 傷みは頭や背中、胸、お腹に起こりやすい傾向にあります。

心気症

医学的な診断・検査を行ったのにもかかわらず、不安や症状に悩んでしまう状態です。過去に発症した疾患や、家族がかかった疾患などが関係しているケースがあります。

身体醜形(しゅうけい)障害

「自分の外見はひどく醜い」と過剰に思い込んでしまう状態です。

身体表現性障害の治療

薬物治療やカウンセリングを行います。まずは身体的な問題はないということを理解し、きちんと心の底から納得していただくことが重要です。とはいえ今まで苦しい思いをしてきた患者様にとって、なかなか難しいことかと思います。
また、ストレスの原因を特定し、環境を調整するための指導や、ストレスをうまくコントロールするための治療も一緒に行って参ります。

パニック障害

パニック障害とは

パニック発作が起こった状況を必要以上に避けてしまうことで、日常生活に支障をきたしてしまう疾患です。パニック発作とは、動悸や震え、めまいなどの不調とともに、強い不安や恐怖が湧いてくる発作です。
ただし、動悸やめまいなどの症状は、他の疾患や不調でも起こり得ます。そのため、何らかの疾患がないかを調べることも重要です。

パニック障害の原因

精神活動と関わる大脳と、不安・興奮と関わる大脳辺縁系に、セロトニンの分泌異常が起こることで青斑核(せいはんかく)が誤作動し、交感神経が強くなってパニック発作が起きるという説があります。
交感神経系は命の危険を感じた時に、回避行動を起こす役割を担っています。
しかしパニック障害になると、過剰に刺激を受け取り、パニック発作が現れてしまうのです。

パニック障害の特徴

交感神経系の過活動状態は、危険を避けるための本能であり、危ない状況にいる時に起こる生き物の自然な反応です。例えば、閉所恐怖症の患者様が狭い場所にいるように 、苦手意識が強い場面に遭遇すると発作的症状が現れやすくなります。
また、トリガーとなる特定の状況がなく、突然の理由もなしに突然 、発作を起こすパニック障害もあります。

予期不安と広場恐怖

予期不安とは、パニック発作によって感じた辛い思いから、「また発作を起こしたらどうしよう」と強い不安を抱いてしまう状態のことです。
広場恐怖とは、パニック発作を起こした所や、助けが得られない状況に対して、恐怖感を抱く状態のことを指します。
どちらも放置すると強くなり、日常生活に大きな支障をきたしやすくなります。

パニック障害の症状

精神的な症状と、身体に現れる症状に別れます。どちらも突発的に生じ、10分~1時間程度で収まります。数時間以内には元の状態に回復します。

精神的な症状
身体に現れる症状
パニック障害を起こす状況

発作を起こす場所・状況は一人ひとり異なりますが、特に、異動が難しい場所、人混みの多い場所、自分一人しかいない場所にいると、起きやすいとされています。
理由なくパニック発作を起こすケースもあり、不眠に悩む方もいます。
パニック発作は激しい恐怖感を抱くので、次の発作に対する恐怖感も強くなりやすいです。お早めに当院まで、ご相談ください。

パニック障害の治療

薬物療法をはじめ、生活習慣の改善や認知行動療法などの心理療法を行い、改善を目指します。また当院では、漢方薬の処方にも対応しています。
初診時には治療・服薬に対する不安感が強くなりやすいので、当院では、パニック発作についてきちんと理解できるまで、丁寧にお伝えしていきます。しっかりご理解いただいてから、治療方針を提案します。

薬物療法

不安を軽減させる抗不安薬と、心のバランスを整えるSSRIを中心に、処方します。
処方は少量にし、副作用についてお伺いしてから調整していきます。短期間の処方に適している薬につきましては、症状の改善が確認でき次第、少しずつ量を減らしてしていきます。漢方薬の処方にも対応していますので、ご希望の方はお気軽にお申し出ください。

心理療法

心理療法は、現在の気持ちを整えたり、物事の捉え方を変えたりする必要があると医師が判断した際に、受けていただきます。 発作が起きやすい状況を把握できるように促す認知療法や、患者様のお話をお聞きして理解・共感した上でサポートする支持的精神療法、苦手なことを無理のない範囲からチャレンジできるためのサポートを行う認知行動療法などがあります。

御来院いただいた後の注意点

「また発作を起こすのでは」という不安が改善されるまで、治療を継続することが重要です。特にパニック障害は、改善と悪化を繰り返しながら少しずつ良くなっていくことが多い疾患です。目の前の結果に一喜一憂すると、よりストレスや精神的負担が増えてしまいます。用法・用量を守った服薬と、定期的な受診をゆっくり続けていきましょう。

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